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ティラノサウルスによろしく

81年、干支は酉

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81年、干支は酉

1981年生まれの、韓国人と一緒に住んでいた。
その前は、81年生まれの中国人と一緒に住んでた。
別にその年代に対して、特別な感情を持ち合わせているわけではなく、
たまたまの巡り合わせでそうなった。
韓国人の姓は李と言い、中国人の姓は張と言った。
その典型的な姓を持った二人を、
振り返ってみる話し。



張とは、北京で一年間ルームシェアをしていた。
別に二人で相談し合って、同じ部屋を賃りたのではなく、
私が不動産屋に紹介された部屋に行ったら、彼女がすでに住んでいた。
中国、少なくとも北京では、これは一般的なことで、
アパートの一室をまるまる貸し出ししたりなどせず、その中の部屋ごとに貸し出しをしている。
つまり格部屋ごとに別々の他人同士が住んで、
キッチンやお風呂場を共同で使用するという賃貸形式なのである。
私が賃りた部屋の間取りは2K。
そしてその「2」を分け合って暮らすわけだが、その相手はなんと女性で、
化粧っ気のない、髪の長い、背丈の低い女だった。
初めて彼女と会った時、彼女は歳を5つサバを読んで私に伝えた。
実際の年齢を知った時には、哀れだなという感情を通りこして、面白い女だなと思った。
彼女は教育方面の大学院を出ていて、地方の教師のために補講講座を提供するインターネットサービス会社、みたいなところに勤めていた。
お給金は日本円でざっと10万弱ぐらいで、うーん、大学院出てそれは世知辛い。
そうこう思っているうちに、張さん、私と出会って二ヶ月ぐらい経って、会社を辞めた。
曰く、割に合わないそうである。
前々から、今の仕事がつまらないとぼやいていたが、まさか次の転職先を決めないうちに、本当に辞めるとは。
なんでも海外留学が夢だとか。一年間頑張って英語を勉強するとか。
大丈夫? 張さん?
実は張さん、大学を卒業してすぐに数学の教師になっていた。
そして「ああ、私、子ども嫌いだわ」ということに気付き、教師を辞めて大学院へ。
そこでしばらく勉強した後、今の職に就き、退職。
三十路、元彼のこと引きずって、お見合いは全て断り、実家に帰ると母からいつになったら結婚するんだいという小言、泣くふりをしてやり過ごすという、
張さん、大丈夫?  たまらずに、思わず、
「仕事辞めて今から英語の勉強?仕事しながらでもできるでしょ。だいたい中学校の時から英語の勉強始めて、もう何年になるの?20年?はっは、鬼も笑うな、はっは!」と言うと、
「うるさい!年上を敬え!」と不機嫌になった。
思えば、そんなコミュニケーションばかりとっていた気がする。
 
最近、彼女から、連絡があった。
新しい就職先が見つかったらしい。
「なにしてんの?」
「あんまり昔の仕事内容と変わらない」
「え、それでいいの」
「でも前の職場より給料がいいし、仕事中に海外ドラマとか見放題なんだ」
「ああ、そう……」



李さん、三兄弟の末っ子である。
もう末っ子気質ばりばりの正真正銘の末っ子で、
マジでこいつ年上か、と何度も思わせる永遠の末っ子だった。
まず人懐っこい。誰とでもすぐ仲良くなる。いつもニコニコしていている。
それから、お喋り大好き。女か、と思うぐらい喋る。女か、と思うようなトーク展開をしてくる。やまなし、おちなし、いみなし、その日あったことを、夜寝る前、道で歩いているとき、ご飯を食べているとき、日記帳につづるように、喋りかけてくる。
正直、それには、参った。参ったといか、辛かった。
知り合ってから一ヶ月も経たない内に、私は話しを聞き流す術を覚えた。端から見れば、大変無礼な態度で人の話しを聞く術である。やむなし、生き残るために必要な術なのだ。
彼は大学院で勉強しつつ、研究所でアルバイトしていた。
アルツハイマー病の特効薬について研究しているらしい。
多いときには、実験用のモルモットを、一日に300匹殺すそうである。
彼は北京に住んで、もう8年目という古株で、私が知らないたくさんのこと知っていた。
一緒に散歩したりすると、いろいろなことを教えてくれた。
「あの店の北京ダックが安くてうまいんだよ。今度一緒に行こうね。従兄弟と一緒に行ったら、彼気にいちゃってさ、北京に来るたびにその店で北京ダック食べるんだよね。だから僕はもう八回も行ったよ、あの店に。そういえばその従兄弟は今、山西省で働いててさ、今度休みに遊びに行くことにしたんだ。知ってる?むこうは田舎だから、女買うのも安いんだよ。300元もあれば余裕だろうな。向こうに三日間滞在するとして、2000元も持っていけば足りるかな。それとも足りないかな。まあホテルとかは向こうの従兄弟が準備してくれるんだけどさ。従兄弟は向こうで植物について研究してるんだ。知ってる?植物科学という分野で日本すごいんだよ。韓国も中国もこっそりパクって、今はまあよくなってるよね、はは。で、日本はすごいんだ、こっちが新しい技術を開発したら、技術を盗まないで、何億も金積んで買い取るだよ。すごいよ、日本は、金持ってるよ。昔、とっても仲のいい日本人の友達がいたんだけど、彼はいま名古屋で米つくってるらしいよ。その前は自転車売ってたんだ。山本って言うんだけど、知ってる?はは、知らないよね。彼と昔はよく遊びに行って、一晩中ボーリングしたりしてたよ。彼は汚いって言って、学生食堂にもそこらへんの飲食店にも入らなくてさ、毎日マクドナルドばっかり行ってたりしてたよ。彼は大学の日本人会の会長やっててさ、彼女が半年に一度変わってて、みんな日本人でさ、みんな美人だったなー。そういえば僕も昔、女の子とさ・・・・・・」

私は今度、あの店に、北京ダックを食べに行こうと思った。



おまけ

大学の学生寮で、日本人とも同じ部屋で暮らしていたことがある。
彼は私より一つ年下で、名前を財津と言った。
ある夜、物音がして目が覚めると、
暗い部屋の中で、同居人のノートパソコンが煌々と光っており、
こすこすこすこすこすこすこすこす、
何物かと何物かが擦れる音で部屋中が充満していた。
あーマジかよ勘弁してくれよ、と思いながらも、仕様がないから知らないふりして早く寝ちまおうと頑張るも、眠れず、そのまま一時間という時が過ぎた。
……長い。長いよ。楽しみすぎだよ、それとも遅漏なの?
流石にもう我慢がならないなと考え始めたところ、突然、本当に突然、ぐでんぐでんに酔っ払ったカザフスタン人(女)が、ズッバーンとドアを開けて、部屋に押し入ってきた。
 財津は刹那のスピードでパソコンを閉じて、ズボンを上げて、そのカザフスタン人を追い返そうとする。
しかしぐでんぐでんのカザフスタン人は、財津に抱きかかり、そのままベットに倒れ込んだ。
それからしーんと、無音の時が一分間ほど訪れて、え、なに、まさかセックス始まったりしないよね、え、大丈夫、なに、どうしたの、と思っていると、カザフスタン人が起き上がって、「部屋間違えちゃったー」と帰っていった。
私もこの機会を逃すわけにはいかないとばかりに起き上がり、財津に、「なに、なんかあったの?」と聞くと、「いやなんか部屋間違えちゃったらしくて」と平然とした調子で言い、「本当勘弁して欲しいっすよねー」と続けた。
勘弁して欲しいのはお前だ、と心の中で思うも口にせず、彼がしっかり布団に入るまで、私はまだ起きてるよアピールをし続けて、彼がパソコンを開いて再開したりしないように牽制した。

そんな財津君は、今、大学を辞めて、受験勉強をしているらしい。
なんでも中国に行って、やっぱり必要なのは英語だ、ということ気付き、ICUという大学に挑戦するそうである。
朝が弱いんですと言って、ほとんど授業に出てなかった財津君、ウイスキーが大好きで、机の上にはいつもジャックダニエルやワイルドターキーが置いてあった財津君、煙草がなきゃ死んじゃうと言って、毎日上島珈琲に行って煙草二箱なくして帰ってくる財津君、ある日北京ダック一匹まるまる買ってきて、部屋で一人骨までしゃぶってた財津君、タクシーに乗ったら、300元の偽札つかまされて帰ってくる財津君、中国の風俗で童貞捨てたら、お祝いに5元もらってた財津君、飛行機チェックイン時の身体検査で、ジッポライター没収されて辺りかまわずマジギレしていた財津君、
彼は今、元気にしているのだろうか。

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