小さいころよく近所のどぶ川にザリガニ釣りに行って、木の棒とたこ糸とするめで何匹も釣った。
日が暮れて、バケツの中で山盛りなったそれを見ながら、家に持って帰ったときの母の表情を思い、すべてをどぶ川に返したときの気持ちは夕暮れと相俟って、赤く、紅く。
考えたものだ。
あーこいつを、食べることができたらなあ。家に持って帰って母ちゃんに喜ばれるのになあ。
いま、夢が叶う。
ザリガニ食った。
彼のドブ臭き川の名を、彼の暮れなずむ街の名を、彼の馴れ合いし君の名を、唄っていたのは赤い彗星の虾(xiā)
因みにアメリカザリガニは昭和初期にウシガエルの食用として輸入されたもの。
別名まっかちん。
余談であるが、中国人とザリガニを食しているとき、日本ではザリガニは不衛生だから食わないと私が言うと、これ食べる文化は日本人が第二次大戦中に持ち込んだものだからと言われ、そうなのかと思いつつ、当時は食べるものがなかったから食べていたかもしれないけどいま現在食べる必要はないんじゃないと言うと、でもだっておいしいんだもんと笑顔で返されたので、じゃあしょうがないねってなった。