俺の周囲にはどうしようもない人々が集うが、俺もどうしようもない人間なので、類は友を呼ぶ、ルイトモだね!
前の週末、今年33になる同居人が、車とバイクの新車なんかが立ち並ぶモーターショーに、ミニスカ穿いたねーちゃんを見るのが目的で、朝早くから出かけたんだが、日の沈む前に家に帰ってきて、ただいまも言わずにタンスを開いてパンツを掴むと、トイレに駆け込んで、しばらくして出て来てこう言ったんだ。「臭わんだろ?」って。なんの話しかと眉をひそめると、「いや~、うんこ漏らしちゃった~」って満面の笑みで、手洗いしたての縞柄のトランクスを俺の顔面に近づけてくるもんだから、俺はそいつを手で払いのけながら「これでお前も名実ともにクソじじいだな」ってつまんねえギャグ飛ばして、ここでお互いに爆笑。頭がおかしいのかもしれない。でも、自己保身はかるようでちょっと申し訳ないんだけど、その時内心けっこうドン引きしてたのよ、俺。しかしながら、パンチラ目当てで外出してうんこ漏らして帰ってくる30過ぎの心境を忖度して、笑い話にしちまうのがやさしさかなと思ったわけ。俺はそう思ったわけなんだよ。
俺の友達に今年に26になるやつがいるんだが、そいつもまたどうしようもないやつでね、相手の迷惑にならないように気を遣ってるフリをして、実は自分が面倒臭いから物事の決断や実行、延いてはそれにまつわる相談事なんかを全部先延ばしにするやつがいるんだけど、初対面のときはすっごい仕事できそうで物腰柔らかないい人だなって思っちゃったんだけど、付き合ってくうちに、いやー、なんでそのこともっと早く言わないの、やらないのみたいな出来事がたくさんあったね、楽しい男なのだよね、彼は。
そんでその彼が、俺に内モンゴル旅行に強く誘ってきたのだよ。諸君、その誘い乗るべきか、乗らざるべきか。彼はこんな格安でいける機会は滅多にないという。この旅行の主要目的は、内モンゴルに行って樹を植えるボランティアだという。だからたくさんの企業が協力してくれ、格安の旅行が可能なのだという。ボランティアしながら異国情緒を味わうことのできる絶好の機会だという。滅多にお目にかかれない、二度とはそうないチャンス。彼はそう再三再四強調するのだ。諸君、不明瞭な方もおられると思うので、大雑把に説明しておこう。内モンゴルとは、中華人民共和国に属する、五つある自治区の内の一つで、その行政単位は省に同等する。中国国内の一つ地区に過ぎないが、面積は日本の三倍あるというから驚きである。近年は砂漠化が進み、黄砂による被害が心配されている。その細かな乾いた砂は、偏西風に乗って海を渡るので、日本にとっても無関係な話しではない。そう、我々は立ち上がる必要があるのだ。産業革命により人々は豊かな暮らしを手に入れたが、その代償として木々は伐られ、地球の気温は年々上昇していっている。我々は地球に見限られる前に、なんらかの行動を起こさなければならない。我々が一人一人できることは、わずかなことだけだ。しかし、その意識こそが大切なのだ。危機に直面していると意識する、その危機感こそが。それは、伝播する。このままではいけないと、各々が自覚するようになる。一人では小さく、頼りなく、無駄に思えていた行動が、みなが意識し、行うようになる。想像してごらん……、ジョンレノンの歌声が、天の国から聞こえてくるようではないか。我々は立ち上がる必要がある。そう、我々の未来がために!
俺は、モンゴルへ旅立った。のだが……、
俺は憂鬱だった。俺は後悔していた。
鈍行列車はすでにモンゴルに向けて車輪を軋ましている。時計は深夜の0時を回った。車内の灯りは消されている。俺は幅65cmほどのベッドに横たわっている。
この憂鬱は空腹からきてるのではないかと思い、持ってきた小ぶりのリンゴを服の裾でよく拭いてから一口かじる。酸いた白けた味が口内に広がる。閉ざされたカーテンの隙間から、一定の間隔で強烈な光線が車内を照らしては消え、照らしては消える。それは線路沿いの白熱灯から放たれるもので、列車の速度に合わせて一瞬で過ぎ去り、また戻ってくる。俺はリンゴを食べている。
俺はモンゴルに行って、木を植えることになっている。それ以外のことは知らされていない。俺の除く人間はすべて韓国人で、このグループ内における公用語は韓国語だ。俺は韓国語で向こうに行き何をするのかというレクチャーを受けた。俺は理解できずに、困惑した表情をつくった。皆はただ笑って俺の肩を叩いた。
先ほど区間駅での停車時に、一人の女の子が閉じ込められるというハプニングがあった。列車の停車時は盗難や無賃乗車を防ぐために、車両間の扉が自動的にロックされる。その子はそのことを知らず、喫煙スペースにもなっている車両間の連結部に残っていたために、列車が再び出発するまでの1時間、そこにとどまらなければない羽目に陥った。俺はそんな騒ぎを尻目に、布団から頭だけ出して、ぼんやりとこの低い天井を眺めていた。ベッドは三段立てで、ベッドとベッドとの間の高さは、上半身をかなり猫背に曲げてやっと起こせる程度だ。俺はそのベッドの一番上を陣取って、横たわっている。俺のからだより下の空間では、聞き取れない言語で賑わいでいる。
俺たちのグループが占拠する寝台車は一時、その子がいないと騒然となり、無事が確認されると笑いが起こった。車両間の扉はガラス窓が付いており、見通せるようになっている。その子の友だちが手を振り、ガラス窓越しの彼女は手を振り返す。暖かな笑いが車内に充満する。
ベッドから廊下に突き出た俺の足の下を、人々が行き来する。その往来を感じながら、俺は一向に現れない睡魔を恨めしく思っている。時計は、1時を回っている。
それから……、それから……。
昨日、この文章を打っている途中、インターネットの接続が途切れた。
月が変わったので、お金を振り込まねば、ネット通信させてもらえないのである。
私は慌ててこの文章をメモ帳にコピペすると、もう目もしぱしぱするので丁度いいやと眠った。
それで今さっきお金を振り込んで、書き止したこいつを再開しようと、意気込んだところであるが、どうにもうまくないね。
よしっ、じゃあ、こうしようか。
つづく