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ティラノサウルスによろしく

大都会

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大都会

それなのに、彼は大丈夫と言って、私にそれを突き刺す。







ルームメイトは医者のタマゴで、中国医学を専門にしている。来年、ニュージーランドで病院を開いている親戚の下で、働くことが決まってるらしい。
中国医学と言うと、漢方、鍼灸、整体なんかがあるけれど、彼は主に鍼を用いて治療を行う。
あれね、私もそのルームメイトにやってもらったことがあるんですが、なんかこう、抵抗できない感がすごい怖い。
鍼をからだにぶっ刺さされるのは、注射とか献血とかけっこう好きだし、ぜんぜん問題ないんですが、鍼治療はちょっと。
あれ刺さされると、なんですか、刺入って言うんですか、刺入されるとからだが動かせなくなるんですよ。映画とか漫画とかにあるみたい<ザッ。『ん?誰だ!お前は!』スッ、プスッ。『う、動けぬ・・・!!!!』>みたいになるんすね。いや実際は無理矢理動いてやろうとすれば、動けそうな感じはあるんですよ。でも神経がびんびんに痺れてね、すごい怖いの。動かそうとすると、筋肉が猛烈に拒否するのね。でもやはり他者からの支配からは抜け出したい。受身のままの人生なんて真っ平御免だ。自分の人生のレールは自分で敷く。ラナウェイ、ラナウェイ、いまかけてゆく、あっあ~。っていう気持ちがあったから、果てしない夢を追い続けるために、からだを動かそうとするも、ああ駄目、からだが痺れる。交わす言葉も寒いこの街。
その必死にもがく様をルームメイトが見てね、こう言うのよ。「別に動いてもいいけど、そうするど、鍼が筋肉に押されて曲がって歪むから、抜くときめちゃくちゃ痛いよ」
私は人形になった。木人である。違った。木人は手とか足めっちゃ動くじゃん。私は木人よりも劣るゴミである。折れ曲がった鍼が肉体を傷つけることに恐怖して、自由を諦めてしまったものだ。
だから、鍼治療は怖いから、もうやりたくないです。おわり。


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