喧騒を離れ、まずは一服。
パソコンの前は、落ち着くなあったら、
このすっとこどっこい。
私は人見知りです、
なんて、声を大にして言ったところで、
へえ、そうなんだ、
そんな一言で流されてしまうさ。
そりゃ、そうだ。
従兄に子どもが生まれて、はや五年。
私が遊びに行くと、甥っ子は父の背中に隠れて出てこない。
ひょっこり頭だけ出して、
恥ずかしそうに、こっちを見ている。
「ウチの家系は代々、人見知りだからなあ」
居間でお茶を啜っていた、祖母が言った。
血筋。遺伝。免れ得ぬもの。
馬鹿な話しである。
どこでどう間違えたか、学校の大きなイベントに参加することになった。
たくさんの人の前で、ソーラン節をやるそうな。
そんなことは、別にどうでもいいのである。
問題は、それに向けての練習。
の間の、休み時間、及び、練習後の和気藹々とした帰り難い雰囲気。
あら、話しが見えてきちゃった?
真面目に踊りの練習をしている間はいいのだけれど、
間が空いて、しばし、団欒の時。
困っちゃーうな、あはは。
手持ち無沙汰に火をつけて、副流煙が危ないからね、
そっと輪から離れる。
「××さん! なんでそんな孤高なんですか!」
参っちゃーうな、あはは。
そんな孤高などいう気高い精神は、持ち合わせていないのだよ。
「ほらほら、あっちでお菓子くばってますよ!」
十月三十一日、ハッピーハロウィン。
私を除く皆は、仮装して練習に参加。
それぞれが思う怖ろしいものに扮して、トリックオアトリート。
怖ろしい話しである。
だいたい、どうしてこんな怖ろしい破目に陥っているのかというと、
このソーラン節を踊る団体のリーダーが知り合いで、
たまたま飲みの席で一緒になって、
こんなイベントがあるんだがやってみないかと誘われ、
一度行って顔を出してみるも、
すでに完成されているコミュニティに馴染めずに、次の練習から行かなくなる。
これで話しは終わりかと思いきや、行かなかった練習日の次の日に、
別の居酒屋で、よもやの再会。
「なにバックレてんっすか~」
「あー、ごめんごめん。やっぱ俺、馴染めないわ」
「そんなことないっすよ」
「いやほんと無理だったから、勘弁して」
「大丈夫っす。いまちょっと人もびみょーに足りなくて、困ってんっすよ。頼みます!」
「いやいやいや、無理無理無理」
「まあまあ、とりあえず飲みましょ。ここ、僕持ちますんで」
「いや、そういう話しじゃなくてさ……」
―1時間半経過―
「じゃあ明日も練習ありますからね! 絶対来てくださいね!」
「わかった、わかった。むしろお前が遅刻するなよな!」
「はい! じゃあ待ってます!」
「よし! じゃあ明日、最高のソーラン節、お前に見せてやんよ!」
……わかって頂けただろうか。
私はもう退けないなのである。
ここでバックレてしまったらもう、もう、もう、なんだ、……あれ? なんでバックレちゃ駄目なんだろう?
馬鹿が! てめえが後輩に酒代まで出させた上に、でかい口叩いたからだろうが!
はい、仰る通りでございます。
しかしながら、しかしながらだよ、こんな私にも、言い分があるのだよ。
お願いだから、聞いてくれないかな。駄目? いやいや、そんなこと言わないで。いやいや、奥さん、その豹柄のスカーフがよくお似合いで! それからその小物入れ! え、それご自身でお作りになられたの? まあ! わたしったらすっかり売り物だと思ってて。ええ。あまりにキレイだから、どこで買われたのか、お聞きしようと思っていたのに。本当に上手にお作りになるわね。ええっ、駄目よ! わたし手先が不器用だから、奥様から教えてもらったところで、時間の無駄になるだけだと思うわ……。え! そんな、悪いわよ、作ってきてくれるなんて。本当にいいの? 悪いわね。本当にいいのかしら。悪いわね、ほんと~~~
私が言いたいことは以下の三つ! 心して聞いてもらいたい!
一つ! 私が参加したグループに、知り合いはリーダーその人だけである。
二つ! 私を除いた参加者同士は皆、以前からの知り合いである。
三つ! ていうか人いっぱいいるじゃねえか! 参加者ぜんぜん足りてるじゃねえか! むしろ俺が参加したことによって、一人へんなところで踊ることになっちゃったじゃねえか! こちとら少ない人数で、こじんまりやるっつうから参加してやったんだよ! それがなんだ、三十数人なんていう小学校の一クラス分ぐらいある人数集まっちゃって、もう団体行動必須じゃねえか! 学校のクラスならまだいいよ、いろんなやつが無差別に集まってんだから、自分と似たようなやつ見つけて、隅っこで縮こまってられるからよ。それがこんな大衆の面前で率先して踊りたいとかいうアクティブでアグレッシブなハイカラさんの集団に、どうやって溶け込んでいけばいいんだよ! 喧嘩売ってんのか! リーダー! お前が俺を誘ったんだから、俺のそばを絶えず離れずに俺を見つめてギュッとしてろや! 寂しいやんけ! 一生一緒にいてくれや! みてくれや才能も全部ふくめて! 愛を持って俺を見てくれや! いまの俺にとっちゃお前がすべて! ちゃんと俺を愛してくれや! 俺を信じなさあい♪
例えばこれが精神修行の一環だとして、
私はこの機会を神に感謝すべきであろう。
さもなくば、私、
頭おかしくなっちゃう。
あはんっ。あっ。
ハッピーハロウィンンンンンンンン!!!!