魔法以上のほにゃらら
先日読み終えた筒井康隆『創作の極意と掟』。いい本だった。そのなかで『涼宮ハルヒの消失』について触れている箇所があり、曰く、『涼宮ハルヒの消失』は、全編が遅延という珍しい小説である、らしい。ここでいう「遅延」というのは小説のテクニックのことで、簡単に言えば物語の本筋とは無関係のことを書き連ね、逆に読者を本筋に釘づけたままにすることらしいのだが、これだけではかなり説明不足なので、詳しいことは実際に手に取って読んでみてくださいってことでお願いします。
それで涼宮ハルヒの消失、および涼宮ハルヒシリーズを筒井氏はかなり高く買っていて、この作品がきっかけでライトノベルに対する考えを改め、さらに自らライトノベルを書くに至ったのだそうだ。
私は涼宮ハルヒの憂鬱は、アニメで観ただけで小説まで手を伸ばしていない。アニメは面白く観た記憶はあるのだけど、どこが面白かったなどは思い出すこと能わず。そういうわけで、実は最近また観直してみようかと考えていた矢先、筒井氏の絶賛を目の当たりにしてしまったので、それじゃあどうせならアニメじゃなくて本、読んでみよっか、なんつって昨日、ブックオフにてとりあえずシリーズ四巻目、涼宮ハルヒの消失までを各108円で購入。現在一巻目の三分の二ほどを読み終えたところである。徐々に、徐々にハルヒを取り巻く連中の正体が明らかになり、しかし明らかになったところでまったく明らかではないと言う微妙な状態で。まあアニメを観ているものだから驚きというものはない。
筒井氏の絶賛は置いておいて、というわけにもいかないのが正直なところなのだけど、お話しに引きずり込む筆力みたいなものは確かに感じる。ってこの程度の筆力は、商業誌で書いているプロの作家なら当然備わっているだろうけども。それにしても超能力者や未来人が平然と現れて、ちんぷんかんぷんなことを宣うことに違和を感じさせないような空気感を自然に作り上げているわけだから、やっぱり上手いのだろうと思う。
ひとつ、面白い技法が見られた。朝比奈みくるがキョンに自らが未来人であると告げるシーン。連続で朝比奈さんの台詞が叩き込まれるのだけど、一文ごとに鍵括弧で括っていて、これがさながら「1カメ! 2カメ! 3カメ!」と、非常にアニメ的というか、小気味いいテンポを生んでいて、おほほほほほほほっとこみあげた笑みが。もっともこの同一人物の台詞を連続して鍵括弧で括るという表現は、おそらくハルヒは初出ではないだろうと思う。もっと以前から誰かやっているはずだし、十中八九私もそんな小説を読んだことがあるはずだ、覚えていないだけで。
一巻半ばのいまは、ちょっとわくわくするSFって感じで、結構いい感じです。筒井康隆お墨付きということとはまったく関係なく。
そういえば昨日、ニコニコ動画ですごくおもしろいアニメを見つけたので貼っておきます。
ニコニコで60万以上、YouTubeで150万以上再生されているので既にご存知の方も多いとは思うけれど、私は昨日初めて視聴し、そしてツーンと、感動した。特に最後のお姉さんの「サ、次ハ、11×11ネ」という台詞には、極大なSF作品に触れたような心地にさせられる。否、本当に極大なSFアニメなのだろうと思う。